人間?エイリアン?ポエトリーラッパー、GOMESSについて

こんにちは。しきです。

今回ご紹介するのは、GOMESSさん。(以下敬称を込めて敬称略)自閉症で元ひきこもりのラッパーとして世に出た方です。HIPHOPのカルチャーも大事にしつつも、ポエトリーリーディング(詩の朗読)や、民謡でのラップ、演技、などなどジャンル横断型に活躍されています。

彼の作品を聞くと、多くの人のラッパーのイメージは変わってしまうかもしれません。

数年前、この動画を初めて再生していた時、思わず涙が出ました。

なんということだろう。こんなことがあっていいんだろうか。
不条理、切なさ、やるせなさ。そんな気持ちが押し寄せてきます。

綺麗すぎるメロディを遠慮なく切り刻むリリック。

自閉症診断のあと、解離性障害を併発したと明かされています。そのことを隠さず、むしろ生きづらさそのものが歌に昇華されています。

歌詞に入っているGOMESSの症状が自分に当てはまるわけではなくても、その奥にある大きな感情は、聴き手を容赦なく揺さぶってくる。オフにしていた何かのスイッチの存在を思い出してしまった、そんな感じ。

命丸ごと、流れ込んでくる、いや、命があふれてくるような。

 

そして…

いいなあ。と思いました。
こんな表現ができるなんて。羨ましい。
うん。どうしても他人の芝生は常に青く見えます。><

以前、このワームホールの山田玲司さんご紹介の回で取り上げた「非属」の概念を思い出します。”非属”を私なりに雑にまとめると…普通じゃなさを感じる人は、ちゃんとしっかり引きこもれ!そして好奇心の赴くままインプットし、気が向いたらアウトプットして、そのうち才能が開花するから!そしたら”面白いやつ”に自然となっちゃうから、あとはエゴを抑えてニコニコ話せば(←ここは難易度高い!)人とコミュニケーションすれば人間関係もうまくいく。みたいな話です。

GOMESSには5年間引きこもった過去があり、その間にゲームしたり、CDを1万枚以上聞いたり、音楽を作るようになったり、ラップをやってみたり、言葉を勉強したり、ラッパーとして世に出る前にも音楽制作で速攻で賞をとるくらい才能を育てることに成功しています。(まさに非属の才能!)

ある意味、GOMESSはラッキーだったのかもしれない。と思いました。その様々な(自閉症等の)特徴がラッキー、ということではなく「診断されたことがよかった」という意味です。「でも大丈夫だし。普通だし。そのうち治るから。」と目を背けず、自分自身が普通じゃない人間だと自覚(覚悟)をするということ自体が、その後の人生においてものすごく大きなことなんじゃないか、と思ったんです。

彼は「自分は普通じゃないらしい」と10歳で自覚したと言います。これは、相当なことだと思います。

普通じゃねえって
並外れてる
人が呼んでる
障害者のクズです

バカにしてる
カモにしてる
あいつはアタマがイカレテル

My name is GOMESS!
人間じゃねえ
孤独の世界からいつも見てる
笑って怒って
人に紛れてもう18年

(『人間失格』GOMESS より引用)

以下、個人的な話になりますが、私が10歳の頃は…

中学受験で塾に入って、友達が一人もできず、誰とも話せない休み時間に早く終れと願い続け、コンビニでお菓子を万引きしたり…。その後志望校はすべて合格し、両親はとても喜んでくれて、大成功した気持ちで中学生になり。小学校の友達のことは好きだったけど恨んでもいたから、離れることができて嬉しかった…極端な優越感と劣等感で何かのバランスを取っていました。

そんな私は「普通」だったんだろうか?
外から見た私は支障をきたしていなかったし、”診断”されようとも思わなかったけど…

私がもしどこかのタイミングで普通じゃないと診断されていたら、自他共に普通じゃないと認められて、”普通じゃない”生活を送っていたらどんなに人生が変わったかもしれない。そんなタラレバ、過去には何も生まないけど…
どこからどこまで普通か、異常か、なんていうことは誰も決められず、主観的なものでもあると思います。

多分、私は診断はされない。なら、自分でその普通じゃなさを認めてあげないといけない。最近、しばらく普通の人ぶっていたけど、でもやっぱりちょっと私は普通じゃない。生きづらい。それを認めて、そろそろ覚悟を決めたいです。

 

以下、GOMESSのインタビュー記事で素晴らしいと思った箇所があったので抜粋します。

中学生のときに書いた歌詞で、ずっと「ああ、変わらないな」って、聴くたびに安心する曲があって。世に出していない曲なんですけど。「普通のことは出来ないから、変であることを求めた。周りのやつはスキルを求めたが、俺はただスタンスを固めた」ってあって。
その歌詞が中3のときに書いた歌詞で。…みんなは上を目指そうとしたときに、必ず努力をするんですよ。例えば受験勉強だった場合、その努力っていうのを「勉強」みたいな、そういう感覚でみんな努力してて。僕はなにを努力すべきかっていうと、「インプット」なんです。「吸収」。

(引用元:ミーティア《インタビュー・前編》GOMESS ーー選択肢は常にひとつだけ

これ、何の話かって、「オリジナリティ」についての質問の答えなんですよね。

GOMESSは、いろいろ症状が苦しいけれど、それでもそんな自分を受け入れている、それが自分だと認めている。その上で、自分が自分を生かすことを努力している。そのスタンスを固めることって… まさに、「普通じゃない。並外れてる。」自分の普通じゃない部分もひっくるめて、今日も生きている、言葉を綴っている。そこに大きなリスペクトを感じます。

(前略)
幸せになりきれないこの心は、きっと彼らの幸せの為であって
僕は不幸でいつづけなければならないと
あの日あなたに抱きしめられてようやく悪夢から醒めた気がしました
震える体をごまかしながら、大丈夫だと笑う顔を僕は忘れません

僕は障害の意味を知りました
病院も家族もみな嘘つきでした
これはきっと病でもなければ僕の存在、心、そのものでした
僕はあなたにとっての障害で
僕は世界にとっての障害者でした

(『障害』GOMESS より引用)

普通じゃないということ。
それって、何だろう?

病気なのか?障害なのか?

「僕の存在、心、そのもの」。これが、すべて物語っているように感じました。

診断名や診断のあるなしが重要なのではなく、今までの自分の、逆境(トラウマ)体験を含む様々な体験、それを切り抜けてきた事、その影響で歪んだものたち、それらが積み重なって今生きている自分自身、なのだなと。

「それも個性ですね。」と言うにはあまりに重いと感じる時もあるけど、それでもこれらは個性、オリジナリティなのだと。この障害みたいな病気みたいなよくわからない生き物、それが自分なのだとまずは自覚する、スタンスを固めるところから改めて始めたいと、そう感じています。

(前略)
たまに自分の事を忘れるときがある
覚えているようないないような
正直、俺は誰なんだろうって考えたら
最後には俺じゃない誰かにたどり着く気がしてる

よく俺は「エイリアンだ」なんて冗談みたいに言ってるけどあながち嘘じゃないんだ
未確認で確信はないんだけど今生きている自分はきっと二人目の自分なんだって事だけわかる
(後略)

エイリアン。

GOMESSは自身のことをエイリアンみたいなもの、と言っていて、それは(歌詞にもあるけど)あながち冗談でもない。本当に、そういうことってあるよな、と思います。外からみたら、同じ人間に見えているんだけど…

お互いの感覚がわからないから比べにくいけど、きっと思っている以上に違うのでは…?

映画の『メン・イン・ブラック』に出てくるエイリアンたちが、人間に擬態していて区別できないんだけど、ふと後ろをむくと、首が伸びてる、舌が長すぎる、実はエイリアンだった!そんなシーンが出てきますが、そんなイメージ。生きづらさを抱えていても、結構擬態のうまいエイリアンも多いと思っています。きっと、私も含めて。

 

最後に。。

最初にご紹介した『人間失格』についてのGOMESSのコメントを紹介します。この自分を貫く強さ、最高にかっこいい。下に、人間失格、アルバム収録版も貼っておきます。(1年後、歌詞が少し変わっています。よかったらこちらも聞いてみてください)

『人間失格は』…、あの曲って、みんな”自己紹介曲”だと勘違いしているんですよ。あれは、『人間失格』だっていうタイトルがすべてで、「お前らだぞ」っていう。「(人間失格なのは)俺を認めなかった、お前らだぞ」っていう曲なんですよ、一応、自分のなかでは。

(引用:https://kai-you.net/article/3529

これから発売予定の5thアルバム『てる』も1ファンとして楽しみにしています。

 

 

12/15(土)に、普通じゃないかもしれない人のための勉強会を開催します。
上記に「精神科にいっても私は診断はされない。なら、自分でその普通じゃなさを認めてあげないといけない。」と書きましたが、この勉強会では「複雑性PTSD」という観点で”外から見るとわかりづらい普通じゃない感じ”を掘り下げていきます。(複雑性PTSDとは、2018年WHOの発行する国際疾患リスト(ICD-11)に初登場した新しい概念です。)

現在5名の方からエントリーいただいています。ありがとうございます。
みなさんのいろんなお話も、聞かせていただけたらと思っています。

12/15(土) 勉強会・複雑性PTSDのトラウマ治療最前線




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ABOUTこの記事をかいた人

しき

心理カウンセリングオフィスリベレスタ事務局&ナギズムライター。カルチャー系「無意識ワームホール」グルメ系「ハッピーブルーラインライフ」思春期の亡霊。石や貝がらなど自然のものが大好き。愛称はしきたん。Twitter: @nagism_